誰も取り残さない災害支援⑫=災害ケースマネジメントの現在地=

能登半島地震の被害に会われた方々に心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。被害に会われた方々と災害支援に対応されている方々が、1日でも早く日々の暮らしに戻れることを願っています。

 

☆能登半島沖地震における災害ケースマネジメント☆

 

 2024年1月1日16時10分頃に石川県能登地方で発生した地震(M7.6、最大震度7)に伴う地殻変動が観測されました。地震による津波も発生しました。発災から2か月が経過した3月1日時点でも、7町村約18,380戸が断水したままです。1次避難所への避難者数は断水の解消と共に減少傾向にありますが、約5,452人の方が住む場所がないまま避難生活を続けています。

 能登半島の被災地で、被災者の早期の生活再建を目的としたアウトリーチによる調査が必要だと、1月の時点で強く感じていたのは、地域で活動する民間団体だった。東日本大震災や2022年9月の台風被害の静岡県での取り組みなど、過去の大きな災害から学び、その被災地にいる方に講師やアドバイザーとして関わってもらいながら、能登らしい復興へ向かっている。

 珠洲市でも、県外の防災士などの災害に詳しい専門職のボランティアを要請しながら、全戸調査が行われた様子があります。輪島市では、保健師のゼッケンをつけたボランティアが、小さな集落を回っているのを見かけています。アウトリーチによる訪問の必要性が浸透してきていることが感じられます。

 災害ケースマネジメントでは、全戸訪問をすることだけが目的ではなく、その先の被災者1人1人の生活再建へ、どのように実施した全戸訪問の内容をつなげていくのかを大切にします。そうでなければ被災者台帳にも調査内容が落とし込まれずにそこで情報が終わってしまいます。

 

・・・全戸訪問調査も、被災者台帳も、そこにある目的が大事・・・

 

津久井弁護士の言葉を借りて言うととしながらも、伊藤さんの思いには、せっかく開いた台帳が、仮設住宅からの退去と同時に閉じられてしまうことになったいくつかの過去の例を繰り返さないようにというものが込められていました。

チーム王冠が能登の被災された方々へ届ける物資倉庫

 

☆被災者をグループごとに把握する☆

 

 石川県として知事は災害ケースマネジメントを進めると公表しています。一方で、県の災害対策本部員会議で災害ケースマネジメントの言葉が頻繁に出てくることはなく経過しています。また、同会議で被災者の1人1人に合わせた、相談窓口やアウトリーチによる生活再建相談への予算がつけられたという報告もありません。

 今回の能登半島の市町では、炊き出しボランティアの団体と避難所とのマッチングをすることで、避難所ごとの炊き出しの格差が出ないような仕組みを実施しています。行政が炊き出しボランティアに向けたチェックシートを案内することで、ボランティアによる避難所への負担を軽減することにつながっています。この現場で起きていることとして、避難所を利用する人数が流動的で、必要な食数の把握ができていないことがあります。これについて伊藤さんは、名簿化する必要がここで顕著に表れると話してくれました。日中は自宅に帰っているが夜は避難所を利用するような方もいます。金沢へ2次避難をしたり、能登へ戻ってきたりする方もいます。この流動的な被災者の動きを把握するためにも、被災者の方々を緩やかにグループ化して名簿にすることで次の支援につながることになります。

被災者の方々からは、名簿化することへの理解や今置かれている状況についての理解など、生活再建に向けての協力が必要です。そのため、能登の被災者へ向けた瓦版を災害ケースマネジメント構想会議のメンバーから発行しています。

能登半島の避難所の様子

 

前例にとらわれない創造的な復興を考える

伊藤さんはこれまで、情報が命だと考えていました。東日本大震災では情報を集めて被災者のニーズを把握し、それに対して必要な支援をすべて完ぺきとは言わないまでも届けてきました。今回の災害で報告された内容の中で気が付かされたこととして、情報を集めても、その情報の中に含まれるニーズに対応できるような資源が情報を集めた団体にないとなったときに、その情報は硬直してしまう、死んでしまうということでした。

昨年の秋田県で発生した大雨被害では、被災した多くの方々が何に困っているのかが分かったとしても、使える制度がないことが起きています。本来であれば、実態に合わせて被災者の支援をしていくのは市町村であり、県や国といった行政の役割だといえます。しかし実際に被災自治体に降りてくる内容は、実態に合わない要件が付いた制度です。顕著な制度が、応急修理制度だといえます。秋田市25%、久留米市では17%と利用率は年々右肩下がりとなっています。

 

・・・被災者が誰1人も取り残されないために、いい方法、いい答えをみんなで考えていきたいよね。・・・

 

最後に伊藤さんがはにかんだように伝えてくれました。

災害ケースマネジメントというアウトラインはでき浸透してきたものの、まだ産声を上げたばかりです。

伊藤さんの見た能登半島の様子。

【 話:一般社団法人チーム王冠 代表 伊藤 / 記事:吉田 】

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