ひとりにしない支援から始まる「お互いさま」の絆

在宅被災者への支援は地域からパーソナルへ。
ケースに合わせた支援方法は地域を越えて、大槌や陸前高田へも。


大船渡アクションネットワークの設立と在宅被災者支援の開始

※現在は非営利活動法人きょうせい大船渡として活動継続中

 東日本大震災直後、さまざまな支援団体が大船渡市で被災地支援活動していました。その中で、大規模な避難所や応急仮設住宅に物資・イベント支援が集中し、目立たない小さな避難所や応急仮設住宅には支援が届かないという状況が見られました。

 この状況を解消するために大船渡市内で活動する支援団体に呼びかけ、2011年6月30日「大船渡アクションネットワーク会議」を設立。共生地域創造財団が中心となり、市役所関係各課や社協、医療関係者、民間支援団体の連携体制を築きました。これにより、避難所や応急仮設住宅の状況を俯瞰・把握し、支援の分散と調整が可能になりました。

 しかし、それでもなお支援が届かない存在として、自宅で生活を続ける「在宅被災者」が浮き彫りになります。私たちは在宅被災者と関わり続け、大船渡アクションネットワーク会議を通じて支援の必要性を地域に訴えました。その結果2012年5月に大船渡市より「大船渡みらいサポート事業」を受託。ここから在宅被災者への本格的な支援が始まりました。

在宅被災者支援

 

被災困窮者との出逢いと困窮者支援体制の構築

 東日本大震災直後は誰もが大変な状況で、支援が届きにくいすべての方々に支援を届けることが重要でした。しかし時間が経つにつれ、被災困窮者の支援要請が目立つようになり、自力で生活を立て直せる方とそうでない方の格差が顕在化してきます。生活力が弱い被災者には、家計改善支援や就労支援など自立するための支援が必要でした。

 2013年12月13日、「生活困窮者自立支援法」が公布されます(2015年4月1日施行)。私たちはこの制度を使った被災困窮者サポートの展開を考え、2014年11月より「生活困窮者自立支援モデル事業」に取り組みました。その中で、「よりそいホットライン」や「フードバンク岩手」などと連携し、緊急の相談への対応体制を構築しました。また、北九州のホームレス支援団体「抱樸」の協力で、生活保護など公的支援を申請している間の、緊急的な生活資金貸付体制も整備。こうして、生活困窮者のための協働支援体制をかたち創っていきました。

 

仮設住宅退去困難世帯への生活再建支援

 2014年度末に大船渡市は「応急仮設住宅の撤去・集約化計画」を発表し、学校の校庭に建てられた団地が優先的に撤去されることになりました。そして、期限内に応急仮設住宅を退去できる人とできない人の差がはっきり見えるようになってきたのです。

 当時の応急仮設住宅は、見守り支援の体制はありましたが、窓口に出向かなければ生活再建の相談は受けられませんでした。そのため、大船渡市と社協、共生地域創造財団の三者で「大船渡市応急仮設住宅支援協議会」を設立し、私たちは生活課題を抱えつつ自ら声を上げられない世帯の支援を担いました。

 最後まで応急仮設住宅に残る世帯の多くは、震災前から何かしらの課題を抱えていました。デリケートな問題を含むため、よりていねいな支援を必要としました。そして、沿岸被災地地域では比較的早く、2019年5月に全戸退去完了し、退去後も課題のある世帯には継続して伴走しました。この生活再建支援の活動により、震災以前から課題を抱えていた多くの世帯とつながることになりました。

仮設住宅からの再建支援

 

現在の取り組みと今後の展望

 被災世帯が応急仮設住宅を退去し、表面的には解決したように見えても、高齢独居世帯の孤立という課題が残りました。

 2019年度から「災害公営住宅コミュニティサポート事業」を受託し、災害公営住宅の自治会の立ち上げや周辺地域との交流機会創出サポートを行い、安心して暮らせるコミュニティづくりに取り組んでいます。また2012年度の「大船渡みらいサポート事業」から現在の「大船渡市パーソナルサポート事業」まで、課題を抱える被災者への見守り訪問、生活相談、困窮世帯への支援活動も継続しています。

 大船渡事業所は2022年春から「NPO法人きょうせい大船渡」となり、共生地域創造財団の理念と精神を受け継ぎながら活動を続けていきます。大船渡市とその周辺の地域を中心に活動し、「地域に支えられ、地域を支える」、「人と人、人と社会をつなぐ」そのような支え合いが張り巡らされた地域、生き生きとそして穏やかに安心して暮らせる地域づくりを大船渡のみなさんと共に目指していきます。

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