東日本大震災の緊急支援から始まり、共生地域の創造へ
共生地域創造財団 7つの理念
- もっとも小さくされた者への偏った支援を小さくかつ継続的に行う
- 当事者から聴き、学ぶ姿勢をもつ
- 困窮者の課題を経済的困窮と関係的困窮として捉える
- 絆の相互性を尊重する
- 自尊感情と自己有用感を尊重する
- 官民の支援活動・団体との連携を図る
- 復興ではなく新たな共生社会の創造を目指す
発災直後の緊急支援と組織の立ち上げ
2011 年3月 11 日、東日本大震災が発生。東北の太平洋沿岸に津波が押し寄せ、甚大な被害を及ぼしました。その直後より、仙台のホームレス支援団体がいち早く炊き出し支援を開始したものの、未曾有の事態に対応できるほど物資の備蓄はありません。
同じ頃、福岡県を本拠地とするグリーンコープ生協のトラックが、支援物資を積んで東北に向け出発。「トラックが進めなくなったところが被災地」と考え、明確な行き先は定めずに北上していました。グリーンコープと同じく福岡に本部を持つホームレス支援全国ネットが両者を繋いだことで、仙台の炊き出しの現場にグリーンコープの物資が届けられます。
こうして震災3日後から、仙台での協働支援がスタートしました。更に、東京を本拠地とし東北の生産者との提携が多い生活クラブ生協が加わり、3者の協働支援体制が出来上がります。この協働が基になり、共生地域創造財団は発足しました。
小さくされたものとの出逢いから始まる支援
共生地域創造財団の活動を特徴づけるのが「もっとも小さくされたものへの偏った支援を小さくかつ継続して行う」という理念です。行政制度等に代表される「一律平等の支援」が届かない方々を探し、出逢った責任を重んじて偏った関わりを続けることを大切にしてきました。物資支援を通じて出逢い、その後の産業再生まで伴走してきたのが、斉藤農園、丸子農園、マイファーム亘理といった生産者の方々です。
そして、築いた関係性は、問題が解決すれば終わるわけではありません。「絆の相互性を尊重する」「自尊感情と自己有用感を尊重する」という理念は、一方的に支援する関係ではなく、支援された人が誰かを支える側にもなる「お互い様」の関係性を目指すことを意味しています。この「相互多重型支援」の形が、共生地域創造財団が目指す関係性です。
象徴となったのが、石巻での「笑える牡蠣」の取組でした。他にも、女性の居場所・手仕事づくりに取り組む「WATALIS」や「コミュニティスペースうみねこ」、現在は就労困難者の雇用創出などに取り組む「高橋徳治商店」など、震災直後は支援を受ける側だった方々が今では誰かを支える立場となり、地域の中で奮闘しています。
伴走型支援の中で見えた格差と地域課題
初期に活動を始めた大船渡では、「官民の支援活動・団体との連携を図る」の理念に基づき、多機関の連携会議体を立ち上げて支援の狭間に陥った方々を探しました。そこで出逢った方々の支援で重要だったのが、「困窮者の課題を経済的困窮と関係的困窮として捉える」という理念。「伴走型支援」の考え方です。物資や情報を届けるだけでなく、時間をかけて信頼関係を築き、関係的困窮(社会的孤立)を抱える被災者に寄り添ってきました。これによって、より本質的な問題を把握し、自死や生命の危機に陥る事態を未然に防ぐことにもつながりました。
東日本大震災から数年が過ぎたころ、自力で生活を建て直せる人とそうでない人の格差が開いてきました。生活が困難な方々への関わりが濃くなる中で「当事者から聴き、学ぶ姿勢をもつ」という理念がより大切になってきます。見えてきたのは、震災以前から地域が抱えていた問題でした。
申請主義、縦割主義の制度の中では、自ら声を上げられない方々に支援は届きません。応急仮設住宅の撤去計画が進む中で、最後まで住宅再建できずに残ったのは、震災前から支援の狭間にいた方々でした。こういった方々の生活再建を支援し、新たな地域を創るため、共生地域創造財団の伴走型支援は更に必要とされるようになります。
地域を越えた活動の広がり
大船渡の取組が起点となり、石巻・大槌・陸前高田と、幅広い地域の自治体から要請を受け、活動範囲を広げることになりました。また、全国で多発する災害の被災地にも対応し、支援活動を広げることになります。
熊本地震の際は、発災直後に現地入りし、現地団体を中心としたネットワーク組織「よか隊ネット」を立ち上げます。このネットワークを活用したことで、支援が届きにくい「車中泊避難者」の存在に気づき、いち早く支援を開始。現地団体との連携には、東日本大震災での経験が大いに活かされました。熊本に対しては、その後もよか隊ネットと連携した助成事業を行っており、西日本豪雨災害で被害を受けた愛媛県でも、同様の助成活動を展開しています。
共生地域の創造に向けて
大槌・大船渡・陸前高田の3拠点では、復興の過程で顕在化した地域課題にも向き合ってきました。高齢者の孤立、シングルマザーの生活困窮、引きこもりなど、いずれも全国的な社会問題であり、震災復興の枠内だけでは対応し切れない課題です。
震災から 10 年が過ぎており、復興予算を活用した活動継続は難しくなってきています。しかしこのまま活動を終えると、顕在化した課題は根本的な解決に至らないまま再び埋もれてしまいます。現在、各事業所は活動の維持発展のため、財団の応援のもとで独立し、災害支援を越えた活動に取り組めるよう準備しています。その上で共生地域創造財団は、より災害支援に特化した活動に注力します。
東北においては、復興から取り残される福島での支援活動を本格化します。これまでは現地の団体に対する後方支援が中心でしたが、福島拠点を設けて常駐スタッフを配置し、現地のニーズに直接的に応える活動に取り組んで参ります。また、引き続き東北に軸足を置きつつも全国の災害に対応していくため、空港や新幹線を利用しやすい仙台に本部を移し、被災地に迅速にアクセスできる体制を整えます。
共生地域創造財団の7つ目の理念は、「復興ではなく新たな共生社会の創造を目指す」です。東日本大震災から11年が経とうとしていますが、活動は終わりません。独立していく団体とも協力し合い、今後も新たな共生地域創造に取り組んで参ります。