つながりを創る④==被災者の生活再建に必要なつながり==
〇民間団体と行政が相互多重に協力する
2014年、公益財団法人共生地域創造財団大船渡チーム(以下、「大船渡チーム」と記載)は、被災世帯等へのパーソナルサポートに加え、応急仮設住宅からの退去・生活再建支援を事業として大船渡市と共に進めることとなる。同時期、大船渡市は応急仮設住宅からの退去ならびに生活再建支援を本格化するため、民間団体と協働した大船渡仮設支援協議会(以下、支援協議会)という団体を組織する。また、同時に官民で協働するための支援ネットワーク会議という会議体を創設し、応急仮設住宅からの退去・生活再建にかかる被災者の現状共有、必要な支援や対応につながる協働支援体制の構築を行った。大船渡チームは協議会の中で、1人1人に合わせた生活再建を実現させるため、支援調整の際のファシリテーションを担っていた。この民間が協働した支援体制は、応急仮設住宅からの生活再建支援が円滑に進んでいくことを大きく支えていたと言える。
〇平時の地域福祉とつながっていく
一方同年夏、大船渡市は「生活困窮者自立支援モデル事業」の一般公募による委託先を募集した。大船渡チームは、復興支援事業が終わった後も伴走支援が必要になることを視野に入れていたことから、この事業に応募し、受託することが出来た。残念なことに、翌年以降に開始された本事業受託には至らなかったが、モデル事業での経験が、その後の被災者生活再建支援において、生活再建後も続いていく日々の生活までをも配慮する支援、つまり、災害における伴走型の支援を行っていくことに繋がっている。制度だけでは人の生活は救えないことがある。狭間だけの支援も同様であり、地域にある機能を「つなぐ」、「つながる」ための働きが必要であることを実感する機会だったと言えよう。
〇個人とのつながりを地域のつながりへ広げていく
2015年4月以降仮設住宅からの転居が完了するまでの間、大船渡チームは在宅被災世帯を中心とした戸別支援を行うパーソナルサポート事業と応急仮設住宅からの退去・生活再建支援事業の二つの事業を並行して行った。応急仮設住宅からの退去・生活再建支援は順調に推移し、2019年3月には退去・生活再建が完了し、仮設支援協議会もその役割を終えた。同年の4月からは、新たに災害公営住宅のコミュニティサポート事業を大船渡市から受託し、自治会設立支援や住民の交流機会創出のための活動を開始することとなった。在宅被災世帯を主体として戸別支援を行っていたパーソナルサポート事業は、災害公営住宅において全戸訪問を実施し、生活再建後に孤立する住民の調査を行い、在宅被災地域だけにとどまらず活動領域を拡大していくこととなる。この個別対応をするパーソナルサポートと住民自治に対応するコミュニティサポートの二つの事業連携は、被災地復興後の新たな支援の形を模索するきっかけとなっている。
つづく
【 原稿:特定非営利活動法人きょうせい大船渡 熊谷 新二 / 編集:吉田 】