つながりを創る②==だれも取り残されない災害支援==
『つながりを創るブログ』
第2回 支援が届かない在宅被災者の存在
なぜ、発災から1年半もの間、在宅被災者への支援が行き届いていなかったのか。
在宅で被災した方々の多くは、津波にさらされたが流失を免れた住宅がありそこにに住む人や、諸事情があり仮設住宅には入らず賃貸住宅等をみなし仮設住宅として入居した方々で在り、被災していることは避難所や仮設住宅にいる方々と変わりがない。
当時、災害救助法や災害対策基本法などの被災者救済制度では、住居の滅失(流失)または損壊によって住む場所を失った被災者が支援の対象であったこと、大津波による甚大な被害が行政による在宅被災者の把握を困難にしていたことが原因としてあげられる。
〇最も小さくされたものへの支援
共生地域創造財団が掲げる理念の一つに、『もっとも小さくされた者』への『偏った支援を小さくかつ継続的に行う』」とある。これだけ読むと、なかなかわかりづらい言葉だが、要約すると、「自ら助けを求めること、先の見通しを立てることが困難な状況に置かれている人と出会い、(小さくとも)必要とされることに、(偏って)寄り添い、一緒に道筋を考えること、(継続的に)つながること」を行う。在宅被災者支援への気づきは、この理念から始まった。
2011年10月から財団大船渡チームは在宅被災者のプレ調査を実施した。その調査は、行政・社会福祉協議会・福祉の専門機関など様々な地域の資源となる団体が参加する『大船渡アクションネットワーク』で共有され、個別の必要に合わせた支援を考えていく基礎となる。2011年11月からは一般社団法人共生地域創造財団として、ネットワークの中心的役割を担い続けていく。さらに調査結果をもとに、大船渡市に在宅被災者の調査ならびに生活再建支援の必要性と事業提案を行い、2012年5月から大船渡市の委託による「被災世帯等に対するパーソナルサポート事業」として、本格的な調査ならびに生活相談支援が始まることへつなげていった。
〇在宅被災者への全戸訪問型の実態調査
在宅被災者の実態調査・支援活動は、当時雇用していたスタッフ(すべて地元で被災している)が、震災前の住宅地図にマーカーペンで浸水ラインを書き込むといった方法で冠水区域を「見える化」して行われた。調査は、アウトリーチ(事前情報なしの飛び込み訪問)で行われた。事前研修は行っていたものの、飛び込み訪問では、支援活動への誤解や苦情につながることもあったが、被災当事者による訪問相談は、被災しているという共感が生まれやすく、ほとんどの訪問相談では、快く受け容れてもらえた。
実態調査は2013年の6月を過ぎるころには、津波浸水域にある残存家屋訪問を全て完了した。そこでわかったことは、①インフラが停止している中、自宅が残ったことで地域から疎外される状況があった。②調査できた約600世帯のうち約30%の世帯が、使える補助制度を知らなかったこと③被災した勤め先が廃業、あるいは営業停止による失業が全体の約7%であった。
この後、アウトリーチによる出会いは、生活再建の見通し立てや地域でのつながりづくりを目指す伴走型支援が行われていくこととなる。
つづく
【 原稿:特定非営利活動法人きょうせい大船渡 熊谷 新二 / 編集:吉田 】