被災地視察Disaster Area Inspection Project
背景
東北の今を伝える
2011年3月11日の東日本大震災は、日常が一瞬にして奪われる悲惨な出来事であり、私たちは命の尊さを痛感しました。あれから10年以上の月日が流れ、現在の被災地は、復興への道のりを振り返り、未来へ教訓を伝える場所へと姿を変えています。当団体が実施する本視察プロジェクトは、被災地の「今」の風景の中に立ち、地域の方々と直接交流することで、災害からの復興や、誰もが大切にされる「共生地域」を創るためのヒントを得ることを目的としています。視察に参加される方々の住む地域と東北では、地形や行政の仕組みは異なります。しかし、大規模災害時における民間団体の連携や支援システムの構築、生活再建に向けた災害ケースマネジメントのあり方、そして何よりも住民の合意形成の難しさと大切さといった教訓は、地域を超えて共通する重要な学びとなります。私たちは、東北の地で得られる多角的な知見を、次の備えや地域づくりに活かす架け橋となりたいと考えています。
私たちの思い真の復興とは
私たちは「復興ではなく新たな共生社会の創造を目指す」という理念を掲げています。真の復興とは、単にインフラを元通りにすることだけではありません。一度分断された人と人とのつながりを取り戻し、その土地で暮らす人々が「自分たちのまちづくり」の主体となってすすめることが重要だと考えます。視察を通じて私たちが伝えたいのは、成功事例の模倣ではなく、多くの「失敗」や「葛藤」も含めたありのままの教訓です。防潮堤建設による風景の変化や、避難判断の明暗など、現地でしか感じられない重みがあります。物理的な再建が進む一方で、地域の伝統や循環モデルをどう守り、次世代へつないでいくか。私たちは「被災地らしい復興」を模索する当事者の思いに寄り添い、共に悩み、考えるプロセスを大切にしています。
実績
3つのそれぞれの今
支援システムと連携の重要性(岩手県での学び)
岩手県花巻市では「岩手連携復興センター」より、発災直後の民間団体の連携事例を学び、情報の整理とハブ機能の重要性を再確認しました。また、大船渡市の「きょうせい大船渡」では、仮設住宅解消後の在宅被災者支援や、山林火災相談窓口といった独自の活動を視察しました。生活再建が一通り済んだ後に表面化する孤立や自殺といった深刻な課題、そしてそれに対する継続的な見守りの必要性は、これから復興に向かう地域にとって、支援体制構築の具体的な指針となる学びでした。
住民の力と復興の試行錯誤(宮城県での学び)
宮城県石巻市蛤浜では、震災直後の集落での助け合いや、カフェ・民泊といった新しい生業づくりによるコミュニティ再興の事例を学びました。一方で、北上地区では、集団移転を主導した当事者から、防潮堤によって故郷の風景が変わってしまったことへの「失敗」や葛藤についても率直なお話を伺いました。成功談だけでなく、取り返しのつかない変化に対する悔いや、それでも話し合って前へ進む姿勢に触れることで、住民合意形成の難しさと重要性を深く心に刻む機会となりました。大川小学校や荒浜震災遺構の視察では、避難判断の違いが生死を分けた事実と向き合い、防災教育の場としての遺構の役割を痛感しました。
暮らしと未来への提言(福島県での学び)
福島県では、「阿武隈牛の背ウルシぷろじぇくと」を訪問し、漆の植栽を通じた新たな森の再生と生業づくりについて学びました 。これらの視察を通じ、参加者からは「東北で感じたことを、自分たちのまちづくりや支援活動の軸にしたい」という強い決意が示されました 。過去の悲劇を忘却せず、未来の産業や地域の誇りへと昇華させる取り組みは、多くの示唆を与えています。二本松市や葛尾村、川内村では、故郷に帰れない方々、故郷に戻った方々それぞれの暮らしと思いに寄り添った活動に出会えます。
今後の課題
地域を活かす復興につなげる
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住民主体の復興の形と合意形成の確立
今後の復興において重要なのは、それぞれの地域が住民主体で復興を進めることです。東北の事例が示すように、復興の過程では状況の変化に応じた臨機応変な対応が求められますが、その根底には「自分たちはどうありたいか」という住民の意思決定が不可欠です。震災遺構の保存範囲や、新しい活動と伝統のバランスなど、正解のない問いに対して対話を重ねる必要があります。私たちは視察を通じて、住民一人ひとりの思いを丁寧に汲み取り、地域全体で納得解を見つけるための合意形成プロセスを支援し、後押ししていく必要があります。
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その地域らしい復興
復旧が進み被災地のインフラが整備されていく一方で、かつて地域にあった循環や人間関係が希薄になる恐れがあります。これからの課題は、ハード面の整備だけでなく、「被災地らしい復興」を追求し、その土地固有の暮らしや文化を取り戻すことです。また、生活再建の過程で取り残される人が出ないよう、災害ケースマネジメントによる個別の伴走型支援を継続することが不可欠です。私たちは、東北で培われた「誰もひとりにしない」ためのノウハウを活かし、切れ目のない包括的なサポート体制の構築と、地域資源を活かした持続可能なコミュニティ形成に寄与していきます。