宮城事業Disaster Area Inspection Project

背景
活動の始まりと復興の現状

活動の始まりと復興の現状

宮城県石巻市での活動は、東日本大震災直後の2011年3月末、支援が届きにくい牡鹿半島の小さな集落での出会いから始まりました。孤立した小さな集落の漁師のご夫妻が、大切そうに見せてくれた一通の絵手紙に書かれていた言葉。少しずつ復旧する中で、支援する側される側という関係を超えた復興へ挑戦しました。この経験が、私たちの「相互多重型支援」の原点となりました。
大きな被害を受けた石巻市では、震災による被害の大きさが甚大なこともあり、行政支援が行き届きにくい地域や、孤立した生活困窮者が多く存在していました。こうした背景の中で、私たちは石巻に拠点を構え、多機関連携と伴走型支援を軸に、被災者支援から生活困窮者支援へと活動を広げてきました。震災から10年が経過しても、地域に残る困難に寄り添い、人と人のつながりを取り戻すことを目指して活動をつづけました。

私たちの思い真の復興とは

私たちが大切にしてきたのは、物質的な支援に留まらず、「誰かを想う言葉」や「日常の関わり」のような、人を支える根源的な力です。震災で分断された地域や家族の関係性を取り戻し、安心して暮らせる環境をともにつくることこそが、真の意味での復興であると考えています。
石巻での経験を通じて強く実感したのは、困難を抱える方とつながり続ける伴走型の関わりが、人の暮らしに確かな変化を生み出すということです。被災者だけでは乗り越えられない課題に対し、行政や地域との連携を深めることで、公助と共助が育つ地域社会をつくる。その積み重ねが、「生きていてよかった」と思える日常につながると考えます。

実績
支援する・されるを超える

相互多重型の支援
相互多重型の支援

震災後、「これ以上支援を受け続けるのはつらい」という漁師の声を受け、私たちは支援する・されるの関係を越えて共に働く仕組みをつくりました。それが、笑える牡蠣プロジェクトです。生業を再開した牡蠣漁師の方々が、生きづらさを抱える若者たちを作業に受け入れ、互いの力を生かし合う「相互多重に支援する」関係が生まれました。
2015年5月には「笑える牡蠣」として出荷に成功し、漁業復興と就労支援を同時に実現するモデルとして大きな成果をあげました。地域の産業再生に寄与するとともに、多様な人が役割を持ち、支え合える新しいコミュニティづくりとなりました。

地域資源と共に行う支援体制構築
地域資源と共に行う支援体制構築

石巻での継続的な実践が評価され、被災者自立生活支援業務や相談支援包括化推進事業など、行政からの委託事業を担うようになりました。仮設住宅からの転居に伴う不安を和らげるための伴走支援や、行政窓口への職員派遣による相談支援の強化など、行政と市民の間にある支援の隙間を埋める役割を果たしました。
また、居住支援法人として住宅確保が難しい方のサポートを行い、フードバンクとの連携など、行政だけでは対応しきれない生活課題にも取り組んできました。行政機能と民間支援の双方をつなぐことで、地域全体で困りごとに向き合う体制の構築に寄与しました。

ひとりひとりに合わせた継続的な支援
ひとりひとりに合わせた継続的な支援

石巻では、住まいや家族、人間関係など複数の困難が重なる方々への丁寧な支援を続けてきました。45年にわたり車中で暮らしてきた高齢男性には、居住支援を通して市営住宅での生活を実現し、その後も訪問を重ね家族のような関係を築きました。また、家族関係に悩む方には、精神的負担を軽減するための「分離居住」を提案し、生活の立て直しにつながる支援を行いました。
これらの実践は、単発の支援では届かない「暮らし全体」を支えることの重要性を示しています。複雑な課題に対して、一緒に考え、その時に必要な支援へと繋ぎ戻しをする伴走型支援が、人の生き方を変える確かな支えとなっています。

今後の課題
地域資源と共に創る

  • 切れ目のない支援体制
    切れ目のない支援体制

    生活困窮は経済的問題だけでなく、孤立や家族関係、心身の問題などが複雑に絡み合うことが多く、一つの機関だけでは対応が難しいのが現実です。今後は、行政、医療、福祉、教育、地域団体などとの横断的な連携をさらに強化し、課題に応じた専門性を結び合わせる体制づくりが求められます。
    石巻で培った経験を生かし、支援者同士が情報を共有し、地域全体で支える仕組みを広げていくことが重要です。誰一人取り残さない支援の実現に向け、ネットワークの強化と連携の質の向上に取り組んでいきます。

  • 共に生きる地域を創る
    共に生きる地域を創る

    震災から年月が経つにつれ、課題はより個別化・複雑化し、長期にわたる関わりが必要なケースが増えています。単に支援を届けるのではなく、一人ひとりの人生に寄り添い、安心して頼れる関係性を継続することが課題となっています。
    また、孤立を防ぐためには、小さな交流や日常の関わりが生まれるコミュニティの再生が不可欠です。石巻で得た知見をもとに、地域全体が互いを支え合える環境づくりを進め、どんな命でも大切にされる地域の実現を目指します。

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