岩手事業Disaster Area Inspection Project

背景
活動の始まりと復興の現状

活動の始まりと復興の現状

東日本大震災直後、岩手県沿岸部では、大規模避難所や目立つ仮設住宅に支援が集中する一方で、小規模な仮設住宅や自宅で避難生活を続ける在宅被災者への支援が大きく不足していました。こうした偏在を解消するため、私たちは大船渡市内の支援を俯瞰的に整理する「大船渡アクションネットワーク会議」を設立し、多機関連携の基盤を築きました。
活動の中で明らかになったのは、声を上げられず、暮らしの再建が困難な在宅被災者の存在です。2012年には大船渡市から「大船渡みらいサポート事業」を受託し、本格的な個別支援が始まりました。その後は生活困窮者への支援、仮設住宅の退去支援、就労支援、コミュニティ支援と活動領域が広がり、岩手沿岸の各地域が抱える固有の課題に合わせて支援を深化させてきました。震災から10年以上が経過した今も、地域に残る孤立や困窮に寄り添い、誰もひとりにしない支援を続けている仲間が活動中です。

私たちの思い真の復興とは

岩手での活動を通じて学んだことは、被災者支援とは単に住宅や生活基盤の再建を支えるだけでなく、「人と人がつながり、生きる力を取り戻すこと」を支える営みであるということです。仮設住宅の退去、住宅再建、就労の不安、家族関係の悩みなど、震災の影響は長期にわたり人々の暮らしに影を落とします。
その中で私たちが大切にしているのは、一人ひとりの状況に合わせ、共に悩み、必要な支援へと繋ぎ戻しをする伴走型支援です。行政や地域団体と連携しながら、見えにくい困りごとに光を当て、地域全体で支え合う関係を育んできました。真の復興とは「自立」の達成ではなく、安心して頼れるつながりが地域に根づくこと。その思いを胸に、岩手での実践を未来へとつなげています。

実績
在宅被災者支援の形

仮設住宅からの再建支援
仮設住宅からの再建支援

2014年度末、大船渡市で仮設住宅の撤去・集約が進む中、期限内の退去が困難な世帯が多数残されました。多くは震災以前から複雑な課題を抱え、支援が届きにくい方々でした。私たちは市・社協と共に「大船渡市応急仮設住宅支援協議会」を立ち上げ、地道な訪問活動を通じて、生活再建への不安や悩みに寄り添いました。
その結果、比較的早期となる2019年5月に全戸退去を完了し、担当したすべての世帯が新たな住まいへの移行と生活の再構築につながりました。日々の暮らしへの“新たな一歩”をともに作り出した取り組みは、地域の深い課題に向き合う契機となりました。

災害公営住宅でのコミュニティ支援
災害公営住宅でのコミュニティ支援

仮設住宅の退去後も、災害公営住宅では高齢の独居世帯を中心に新たな孤立の課題が生まれました。私たちは2019年度から「災害公営住宅コミュニティサポート事業」を担い、自治会の立ち上げ支援や住民同士の交流づくりに取り組みました。
また、「大船渡みらいサポート事業」から継続する形で、現在の「大船渡市パーソナルサポート事業」においても、見守り訪問や生活相談を継続し、困難を抱える世帯への伴走支援を続けています。住宅再建後の見えにくい不安に向き合い、「住まいができても孤立は残る」という現実に寄り添いながら、安心して暮らし続けられる環境づくりを進めています。

「働きづらさ」を抱える方々への就労支援
「働きづらさ」を抱える方々への就労支援

震災の影響だけでなく、引きこもりなど地域に元々あった課題にも対応するため、陸前高田市では就労に不安を抱える方への支援ニーズが高まりました。2019年、私たちは「陸前高田市ユニバーサル就労支援センター」を開所し、「関係性の支援」を軸とした就労支援を開始しました。
グループワーク(椿葉洗浄作業など)や就労体験、地域企業との協働を通じ、“人と出会う経験”そのものが変化のきっかけとなるよう支援を続けてきました。コロナ禍ではオンライン支援や在宅就労機会の創出にも挑戦し、外出が困難な方への新たな支援モデルも築いています。

生きがいづくりと地域コミュニティづくり
生きがいづくりと地域コミュニティづくり

大槌町では転居後も孤立が深刻であり、2017年に被災者支援事業の受託を機に拠点を開設しました。その後、2019年には地域食堂「ひょっこりーぜダイニング」を開設し、家庭の食卓のように安心して過ごせる場を提供しました。ここから、笑顔が戻る高齢男性や、離れていた家族が再会するなど、人と人のつながりが再生される具体的な成果が生まれました。
さらに、台風19号被災者への伴走型支援、コミュニティ農園の運営、買い物支援、子育て世帯向けイベントなど、多様な地域課題に対応。生活再建と生きがいづくりの双方を組み合わせた取り組みとして、地域全体の安心につながる基盤を築いてきました。

今後の課題
地域で続いていく

  • 被災地の持続可能な支援体制づくり
    被災地の持続可能な支援体制づくり

    岩手では震災復興の過程で明らかになった課題が、高齢化・過疎化・困窮の問題と重層的に絡み合い、災害以前からの地域課題と不可分であることが鮮明になりました。復興支援員制度の終了や被災者の一般施策への移行に伴い、支援が途切れやすくなる状況も見られます。
    今後は、行政・地域団体・民間支援が連携し、住民が安心して頼れる仕組みを持続的に維持することが重要です。複雑化する困りごとに対し、誰一人取り残さない支援体制を地域に根づかせていくことが大きな課題となっています。

  • 支援の地域定着と「起業と移譲」の哲学
    支援の地域定着と「起業と移譲」の哲学

    長期支援を持続させるため、私たちは岩手事業を独立法人へと移譲する道を選びました。2022年以降、大船渡・陸前高田・大槌の各事業は地域の職員を中心に新たな団体として独立し、支援の精神をその地域で継承しています。
    これにより、地域の実情に即した機動的な支援が可能となり、被災から10年を経た地域で支援が根づく形が整いつつあります。今後も、地域に根差した団体との協働を続けながら、支援の質と継続性を高めていくことが求められています。

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