石川事業Projects ISHIKAWA
背景
東日本大震災の経験を能登へつなぐ
当財団の活動の原点は、2011年の東日本大震災での緊急支援と、その後続いた長期的な復興支援にあります。私たちはこの経験から、公的支援の届かない課題を丁寧に掘り起こし、寄り添い続ける災害ケースマネジメントと伴走型支援の重要性を学びました。支援する側・される側という関係にとどまらず、住民が主体となって自己決定し、互いに支え合う「共生社会」を地域に創造すること――これが当財団の理念です。
令和6年1月1日に発生した能登半島地震では、地域は甚大な被害を受け、9月の豪雨による二次災害も重なり、人々の心身への影響は長期化しています。さらに、医療費窓口負担免除の打ち切り、仮設住宅の 2 年期限など、新しい制度的課題も被災者を追い込んでいます。こうした「公的支援の谷間」に置かれ、声をあげにくい人々に寄り添うことを続けています。
2025年度は、これまでの緊急期支援から復興期の支援へと軸足を移し、被災の有無を越えて支え合える地域づくりを目指して活動を展開しています。単なる復旧ではなく、地域の未来を見据えた「新たな共生地域」のづくりに挑んでいます。
私たちの思い真の復興とは
能登半島地震から時が経ついまも、地域には生活の再建や心の回復が見えにくいまま残り続ける課題があります。私たちは、東日本大震災での経験をいかし、公的支援の谷間に置かれた人々の声を丁寧に受けとめ、現地のニーズに合わせた支援、子育て世帯への支援、生業の応援を通じて「誰もひとりにしない地域づくり」を進めています。復興とは、インフラの再建にとどまらず、人々が新たな地域を自らつくり上げていく過程そのものです。被災の有無を越えて支え合える関係が育まれることこそ、真の復興の姿だと考えています。
実績
伴走型支援と地域主体の復興
緊急期における「いのち」を支える支援(2024年度)
発災直後より、協同組合(グリーンコープ・生活クラブ)や全国ネットワークと連携し、福祉避難所 12 カ所・一般避難所 11 カ所への物資提供や 5 カ所への支援物資提供と炊き出しを実施しました。輪島市重蔵神社では 47 回の物資配布を行い、毎週 400人以上が集う心の拠り所となりました。心理的ケアとして、傾聴カフェ「あったか fe」を能登町や輪島で計 200 回以上開催し、心の回復を支える場を育んできました。大雨被害への掃除用具貸出しも行いました。ボランティア受入は延べ 163 名になります。さらに、生業再建や販売支援、専門家相談を通じ、地域経済の再生にも取り組みました。
「共生地域づくり」への挑戦(2025年度)
- 居場所の創出・子育て支援
- 災害ストレスが家庭や子どもに影響を及ぼす中、子育ての困難さや不登校などの課題を抱える保護者を対象に「ペアレント・トレーニング」を輪島市で年 2 シリーズ開催します。保護者同士のネットワーク形成や家族全体の心理的回復を後押ししています。加えて、輪島あったか fe と岩井戸あったか fe を拠点に、誰もが安心して過ごせる居場所づくりを進めています。子どもも大人もほっとひと息つける時間を大切にし、臨床美術など心の回復を促す多様なプログラムも取り入れています。こうした小さな交流の積み重ねが、家族まるごとを支え、地域で支え合う力へと確実につながっていきます。私たちは、寄り添い続けることを大切に活動を展開しています。
- 地域主体の復興体制づくり
- 地域主体の復興を進めるため、私たちは行政に届きにくい被災者の声を丁寧に集約し、行政・支援団体との橋渡しを担う「輪島支援協働センター」の体制構築に参画しています。被災後の暮らしの再建には、住民自身が状況を共有し、課題を話し合い、未来をともに描くための場づくりが不可欠です。さらに、道下地区の住民団体や一般社団法人志津良の荘など住民主体で地域を復興していこうと立ち上がった方々と協働し復興の形を模索しています。こうした取り組みを通じて、支援する側とされる側が固定化しない、自立した地域づくりを目指し、住民が主体的に復興を進められる協働体制の構築を進めています。
- 生業支援と地域の復興
- 地域経済の再生に向けて、私たちは NPO 法人当目をはじめ、大沢地区の漁師や個人店など、地域を支える多様な担い手への生業支援を継続して行っています。被災により事業継続が困難となった方々に寄り添い、再建に必要な相談支援や販売の後押しを重ねながら、日々の暮らしを下支えしています。あわせて、能登ならではの文化や営みを未来につなぐ取り組みにも力を入れており、地域のおばあちゃんたちが受け継いできた漬物の商品化や、飲食店の再建と居場所づくりを組み合わせた新たな挑戦も進行中です。小さくても続けられる生業の再興が、地域の元気を取り戻す大切な力になると考えています。
今後の課題
分断を生まない、持続可能なつながり
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家族をまるごと支援する
災害ストレスは子どもの心に深く影響を残し、特に発達障害や不登校などの課題を抱える家庭ほど支援が届きにくく、復興期に置き去りになりやすい現状があります。私たちは、そのような「谷間」に置かれた子どもと家庭に寄り添うため、サロンやコミュニケーションの学びを通じて丁寧にニーズを掘り起こし、相談につながるきっかけづくりを進めています。子どもだけでなく保護者の不安にも応え、家族まるごとを長期的に支える伴走型支援を強化することが、真の復興には欠かせないと考えています。
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地域主体の協働体制の強化と持続性
地域主体の復興を進めるためには、住民が行政やNPO、生協などと連携しながら取り組める協働の枠組みを整えることが欠かせません。私たちは、民間協働センターの立ち上げと運営支援を通じて、地域の課題や資源を整理し、誰がどの役割を担うのかが一目でわかる「見取り図」づくりを進めています。支援する側とされる側が固定化するのではなく、住民一人ひとりが自分の出来ることで参加できる、多層的でしなやかなネットワークの構築を目指し、持続可能な協働体制の実現に取り組んでいます。